贈与を活用した相続税対策
相続税を少なくするために最も有効な方法は、課税対象となる財産を予め減らしておくことですが、そのために有効な方法が生前贈与です。
今回の税制改正では、相続税の基礎控除の引き下げ等による相続税の増税が明らかになっていますので、贈与を活用した相続税対策はますますその重要性を増していると言えます。
贈与税の基礎控除の活用
(1)贈与税の非課税枠の活用
●暦年贈与とは
贈与税には、相続税同様に基礎控除の枠がありますが、相続税と違って受贈者や年数に制限がありませんので、非課税枠を活用しながら長期にわたって実施すれば相続財産を大幅に減らすことができます。
贈与税の基礎控除:受贈者1人につき、年間110万円まで非課税
例)配偶者と子供1人に、毎年110万円ずつ10年贈与を行った場合
毎年2人で220万円、10年間で220万円×10年=2,200万円を非課税で贈与できます。
※相続開始前3年以内の贈与は相続税の対象となります。
●定期金の贈与とは
上記のように、暦年贈与を活用した相続税対策は非常に有効ですが、例えば、1,000万円を年100万円ずつ10年間贈与する契約のような場合には、1年間で受け取る金額は100万円ですが、非課税にはなりません。
契約時に総額1,000万円の定期金の贈与があったとして、1,000万円をもとに一定の評価をして贈与税が課せられることになります。
そこで、このような定期金の贈与との誤解を避けるために、
- 110万円を超える贈与の場合は、贈与税の申告・納税をする
- 贈与ごとに贈与契約書を作成する
- 贈与後は受贈者がその管理・運用を行う
などの配慮が必要です。
(2)相続時精算課税制度の適用
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類がありますが、「相続時精算課税制度」を選択すると、60歳以上の親又は祖父母が20歳以上の子・孫に贈与を行った場合、最大2,500万円まで非課税とすることができます。
※但し、受贈者は、贈与税の申告期間内に、相続時精算課税選択届出書の提出が必要となります。
(3)贈与税の配偶者控除の活用
贈与税の配偶者控除とは、居住用の不動産、あるいは、これを購入するための資金として、夫から妻 (または妻から夫) への贈与を2,000万円まで非課税とする特例を言います。
この非課税枠は、通常の贈与における年間の基礎控除額である110万円と同時に適用できるので、最大2,110万円までを非課税とすることができます。
配偶者控除 2,000万円/回+贈与税の基礎控除110万円/年 合計2,110万円まで可
尚、贈与税の配偶者控除を活用するためには要件があります。
適用要件
- 婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与であること
- 住居用の不動産あるいは、住居用の不動産を購入するための資金の贈与であること
- 贈与された年の翌年の3月15日までに、贈与された居住用不動産又は贈与された金銭で取得した居住用不動産に居住し、かつ、その後も引き続き居住する見込みであること
- 同一夫婦間で、今までに配偶者控除を受けていないこと
- 配偶者控除の申請書を税務署に提出すること
(4)教育資金の一括贈与に係る非課税措置
親や祖父母(贈与者)が、30歳未満の子・孫(受贈者)への教育費を贈与した場合、受贈者1人につき、1,500万円まで非課税とすることができます。
尚、非課税枠は、学校などに直接支払う場合は1500万円までですが、学校等以外に対して直接支払われる金銭で社会通念上相当と認められるものは、500万円までの非課税枠の対象となります。
※詳しくはご相談下さい。
(5)住宅取得等資金贈与非課税制度等の延長・拡充
消費税率引き上げ時期の延長に伴い、期間を3年延長し、平成27年は1,500万円に、平成28年10月~平成29年9月は最大3,000円に拡充した後、段階的に縮小し平成31年6月末で廃止する。
(6)結婚・出産・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設
結婚・出産・育児に伴い、祖父母や両親が、子や孫に資金をまとめて贈与する場合、平成27年4月から一人当たり1,000万円までの贈与税が非課税となります。
以上、贈与を活用した相続税対策を述べました。
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